おしらせ

2020-12-03 13:09:00

咲柔館コラム31 子どもが笑顔になる柔道指導法~「やる気」をうみだし、「自立」をうながす~

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  「パチーン。バンザイ。へそみてポン。」

 先生の明るい声に合わせて、子ども達は上手に受身をとります。

 「すばらしい!」「うまい!」「上手!」

  島根県益田市の保育園、子ども園、支援学童には、子ども達をほめる優しい声が響いています。子ども達もニコニコです。

 島根県の「よしじい と しゅうばあ の じごろうきっず」さんは、幼稚園出張型の柔道教室を約10カ所の園で開催しています。先日、幼児柔道指導法のオンライン勉強会において、島根県の大学生お二人が、約半年間かけて分析した「しゅうばあ」先生の指導方法について発表してくださいました。

 

 

 

①言葉の力

 まず、学生さんたちが注目したのは「言葉」です。先生は、切り替え言葉、問いかけ言葉、など場面に応じて様々な言葉を巧みに使い分けます。特に印象深かったのは「ほめる言葉」です。研究対象とした柔道教室で使われたほめ言葉は、「上手」「いい」「すばらしい」など11種類。なんと40分間で合計67回も子ども達をほめています。うまくできた時、頑張った時に、間髪入れずにほめてあげることが、子ども達のやる気を生み出す秘訣なのだと思いました。柔道の技と同じように、子どもをほめるのも「タイミング」が肝心ですね。

 

 

 

②プロンプトフェイディング

 「プロンプト」とは「行動を生じさせるためのヒント、手助け」のことです(私はこの言葉を初めて知りました)。先生は見本を見せたり、手を取って一緒にやってあげたり、カードを使ったりと様々なプロンプトを用いて子ども達に新しい動きを教えています。これらの工夫のお陰で、子ども達は初めてやる動きも自然に覚えることができます。更に注目すべきは、子ども達の自立を促すために「プロンプトをなるべく早く減らしていく」という点です。この「プロンプトフェイディング」により、子ども達は「自分だけで出来た!」という大きな自信を得ることができます。最終的にプロンプトは全てなくされ、子どもたちは補助なしで出来るようになるそうです。幼児に対しても、年齢や個性に応じて「自立」を少しずつ促していくことが大切さだと再認識しました。

 

 

 

 先生のご指導は全て新鮮で、子どもたちが楽しみながら成長できるメニューばかりです(大人気の「鬼滅の刃」も取り入れています。私も観なくては…)。なぜ先生はここまで卓越した指導技術をお持ちなのでしょうか。それはきっと「子ども達への深い愛情」があるからだと思います。

 「『子どもに好かれる先生』を目指すのではなく、『子どもが好きな先生』でいてください」。これは私が教員時代に、尊敬する上司からいつも言われていた大好きな言葉です。 

 指導技術はもちろん重要であり、常に研鑽を積み続けなくてはいけません。ただ、「子どもが好き」「柔道が好き」という気持ちがあるからこそ、指導技術は向上していきます。この柔道教室は、ある保育園の園長先生から「怪我をしない転び方を教えてくれないでしょうか」とご相談を受けたことがきっかけで始められたそうです。子ども達のことを常に考え続けているからこそ、「安全で楽しく、将来に役立つ最高の稽古」ができるのでしょう。先生の子ども達への言葉やまなざしは、まるで太陽のようです。

 

 

 

 

 ベテランの先生の優れた指導方法を徹底分析し、そのエッセンスを共有することで、柔道界全体の指導力が向上すると今回の勉強会を通して強く実感しました。この研究は書籍化を目指しているそうです。きっと柔道界だけでなく、他のスポーツや教育界全体にも好影響を及ぼすと思います。出版される日が楽しみです。

 素晴らしい研究を地道に行ってくださった学生さんたち、指導にあたった大学の先生、そして、子どもたちのために日々現場に立ち続ける「よしじい と しゅうばあ の じごろうきっず」さんに心から感謝します。

 やはり、子どもの教育は奥が深くて楽しいです。これからも勉強を続け、進化していきます。

 

 

※「note」より転載
https://note.com/shojukan/n/nb420ad376d2d