おしらせ

2021-10-12 21:03:00

咲柔館コラム112 私の得意技①「脚取り大内刈」~女子柔道選手から学んだ技~

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 孫悟空の「カメハメ波」、竈門炭治郎の「水の呼吸壱ノ型 水面斬り」。「必殺技」ってかっこいいですよね。東京オリンピックに出場した選手の皆さんも、アニメに負けないくらいかっこいい「得意技」を持っており、真似をしたいと思っている方も多いのではないでしょうか。

 「得意技」とは、「相手が誰であっても一本をとれる技」だと私は考えています。そう考えると、私の技は「得意技」とは言えませんが、比較的一本をとることが多かった技をいくつかご紹介したいと思います。ただ、メジャーな技ではない上に、全ての技に「ある共通点」がありますので、これらの技を道場でお教えすることはありません。「ある共通点」とは何か。それは、最後の技の時にお話ししますね。(今回だけでも、十分わかりそうですが…)

 

 



①「脚取り大内刈」 ※正式名称ではありません。

 

 「全国大会に出場する」という夢を叶えるため高校に入学したものの、当時の私に一本をとれる技は何一つありませんでした。もちろん、乱取りや試合で相手を投げることは、ほとんどありません。勝つためのヒントはないものかと、アンテナを常に張っていました。そんなある日、テレビである女子柔道選手のすごい技を見たのです。後に五輪金メダリストになるその選手は、相手のズボンを引き上げて片脚立ちにさせ、その脚に大内刈をかけました。ピカーン!私の頭上に電球が光りました。「大内刈はケンケンで逃げられることがある。でも、相手を片脚立ちにさせ、その脚を刈れば絶対に倒れる。この選手天才!これだ!」 そう思い、何度もビデオを見直して研究を重ねました。



 

 

 そして、翌日の稽古でかけてみると、これが面白いようにかかる。味をしめた私は、そこから「脚取り大内刈」を乱取りで何度もかけるようになりました。「やっと相手を投げられる技ができた」と喜んでいた矢先、なんと監督からこの技の「禁止令」が出されたのです。せっかく開けた道を閉ざされ、ショックでした。ただ、今なら高校1年生の私に対するその指導が、いかに正しいものだったか分かります。この技ばかり使うと、他の技や引き手の使い方を覚えなくなる。先を見据えた適切なアドバイスでした。

 しかし、当時の私にとって目の前の勝利の方が大切です。「脚取り大内刈を極め、試合で一本をとれるようになれば先生も許可してくれるはずだ」。そう信じ、叱られても、かけてかけてかけまくりました。その結果、試合でも一本をとることが増え、いつしか注意されなくなっていました。



 

 

 この技は、高校2年生の時に出場した全国大会(写真参照)や大学生、社会人になってからも使い続けた思い出深い技です。おそらく、競技人生の中で1番かけて、一本をとった技だと思います。技の弱点や、ジュニア期にまず覚えるべき技ではないことも十分理解しています。それでも、私にとって柔道人生を切り開いてくれた大切な技です。ヒントをくださった女子選手に改めて感謝します。

 

私の得意技②につづく

 

 

 

※「note」より転載
https://note.com/shojukan/n/n0aa469f08d4c