おしらせ

2022-10-14 13:48:00

コラム「ずっと大切にしたいあの言葉②~ゴミの分別をしない生徒に「ありがとう」~」

咲柔館コラム187
ずっと大切にしたいあの言葉②~ゴミの分別をしない生徒に「ありがとう」~

 

 

 

 

 今回は、私が高校教員になりたての20代の頃のお話です。当時、担任をしていたクラスはゴミの分別がされていないことがあり、その都度注意してもなかなか改善されませんでした。そんなある日、1人の男子生徒が、燃えるゴミのゴミ箱にペットボトルを捨てたのを目撃したのです。その瞬間、今までの怒りが込み上げ、「何回言ったら分かるんだ!分別のルールをしっかり守れ!」とかなり強い口調で注意しました。すると、その生徒はペットボトルをゴミ箱から取り出しながら、「今回は自分ですけど、いつもは自分じゃないです。」と言ったのです。若かった私はその態度に腹を立て、つい感情的に怒ってしまいました。

 

 

 

 

 放課後、この一連の出来事を尊敬する50代の先生(男性)に話しました。すると、先生はにっこりと笑いながら「私も似たようなことがよくありましたよ。」とおっしゃり、今の自分だったらどう対応するかを教えてくださいました。

 

 「それは怒ってしまいますよね。私も先生くらいの年齢だったらそうなっていたでしょう。でもね、年齢を重ねると余裕が出てくるものです。今の私だったら、『私の前で間違った行動をしてくれて、ありがとう』と言いますね。子どもが、間違いをするのは当たり前です。それに駄目だということ自体分かっていない場合もあります。それを教える、直していくのが我々の役目です。もし、大人になってもゴミの分別ができなかったら、彼はすごく困るでしょう。周りに迷惑を掛け、きっと信用もされません。だから、間違った行動を高校時代に発見できたことはラッキーだと思うんです。直すチャンスが生まれたんですよ。だから、私は生徒がいけない行動をした時は、『今で良かった』『自分の前で良かった』と思い、『ありがとう』と言うようにしています。生徒は、注意されると思っていたのにいきなり『ありがとう』と言われてかなり驚きますけどね。そうやって意外な方向から話し出してみると、素直に話を聴き、それ以降しなくなるものですよ。生徒も、心から自分のことを思って言ってくれていると分かるのだと思います。」

 

 生徒に指導する時に「ラッキー」と思い、「ありがとう」と言う。先生の器の大きさにはかなわないなあ、と思いました。子どもが間違ったり、失敗をするのは当然です。頭ごなしにただ叱るのではなく、子どもの将来を長い目で見て、温かい心で接することの大切さを教えていただきました。残念ながら先生はもう亡くなられていますが、今でもうまくいかないことがあると、先生に教えていただいた数々の言葉を思い出します。信念があって、優しくて、面白くて、教養豊かな先生は、今でも私の憧れの存在です。

 

 

 

 

 道場では、お子さんたちを誉めること、認めることを大切にしています。でも、時には注意しなくてはいけない場面もあります。そんな時、「ラッキー」「ありがとう」と思えるのは、先生の教えのお陰です。先生から教わったことをこれからも大切にし、お子さんたちの成長を笑顔でサポートしていきたいと思います。

 

 

 

 

「柔道家が増えることで、社会はより良くなる」
文武一道塾 咲柔館

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※「note」より転載
https://note.com/shojukan/n/n73eab7cc61db