おしらせ
2022-09-09 22:56:00
コラム「コミュニケーションで共有すべき大切なもの」(子どもクラス)
咲柔館コラム183
コミュニケーションで共有すべき大切なもの
教員時代、国語の授業で扱った教材の中で、今でも心に残っている文章がいくつかあります。その1つが「ゲラダヒヒの平和社会」(※)です。
筆者は、臨床医として終末期医療に関わる大井玄先生。主に認知症の患者さんとのコミュニケーションについて書かれているのですが、この中でエチオピア高原に住むヒヒの一種「ゲラダヒヒ」が紹介されています。ゲラダヒヒは、群れ同士でのケンカが全くない珍しい動物です。ユニット(家族)間、その上位集団のバンド(村)間の関係は対等で、暴力のない平和社会を築いています。霊長類学者の河合雅雄先生によると、平和社会を維持できる理由は、鳴き声を「相手を安心させる、なだめるといった社会関係の調整」に使っている点にあるそうです。ヒヒたちは、「情報」を伝えるための言葉は使えませんが、「情動(感情)」に訴える音声コミュニケーションを巧みに行うことでトラブルを防ぎ、仲間同士のつながりを維持しています。
著者は、コミュニケーションには「情報共有」と「情動共有」の2つあり、認知症の患者さんと会話をする時は、「情動的コミュニケーション」が大切だと言っています。「情報共有」がうまくできなかったとしても、一緒に会話を楽しみ、優しい声でうなずくことで、心を通わせることはできるそうです。
※『「痴呆老人」は何を見ているか』(大井玄 著/新潮新書)の一部を抜粋した文
私は、この文章を初めて読んだ時、亡くなった祖母のことを思い出しました。晩年、介護施設に入っていた祖母は、少しずつ季節や自分の年齢が分からなくなっていきました。私は、祖母との会話に関して、深く反省しています。「もう冬だね」という祖母に対し、「違うよ。今は夏だよ。」と言ったり、「おばあちゃんは、今○○歳だよ。」と祖母の話す内容をその都度訂正し続けていました。「以前のおばあちゃんに戻ってほしい。」そんな想いからだったとはいえ、祖母には申し訳ないことをしたと思っています。「正しさ」よりも「優しさ」を優先するべきでした。
今年の5月に待望の第一子が生まれました。お陰様で息子は元気にすくすくと育っています。最近は、「あ~」とか「う~」とか、たまに「あう~」とか声を出すようになりました。私は、息子が声を発する度に、うんうんとうなずき、「わかるよ~。」「そうだね~。」と相づちを打ちながら語りかけています。当然まだ会話はできませんが、日々お互いの気持ちが通じ合っていくのを感じています。妻にはかないませんが、泣き声を聞いただけで、「ミルクかな」「おむつかな」「眠いのかな」と息子が欲していることが何となく分かるようにもなってきました。きっと天国のおばあちゃんも、この親子の交流を笑顔で見てくれていると思います。
道場でもこうした心と心の交流を見ることがあります。先日、足裏を合わせてごろごろと転がっては起き上がる「だるま」という準備体操をしていた時のことです。1人のお子さんが、なかなか起き上がれずに、「う~ん」「あれ~」と言っていました。すると、すぐ隣にいた未就学児のお子さんが、その声を聞くやいなや、すぐに体を起こしてあげたのです。「体を起こして」とか「やり方を教えて」という言葉がなくても、仲間の困っている声を聞いただけで、行動に移す。その彼の姿にとても成長を感じました。その後の2人はニコニコ。この体験を通し、2人は更に仲良くなったように感じています。
人が生きていく上で、コミュニケーションはとても大切です。ただ、コミュニケーションで共有するのは「情報」だけだと思ってはいけません。自分の言葉や行動に気持ちを込めること、同時に相手の言動から気持ちを感じることもコミュニケーションの重要な要素です。
大井先生は、先の文章の中で、「楽しい情動を共有するという経験を重ねると、理屈を超えた親しい関係が成立します。」と言っています。「咲柔館(しょうじゅうかん)」の「咲」という時には「笑」という意味もあります。柔道は「楽(らく)」ではありませんが、「楽しい」面もいっぱいあります。道場に来られた方たちが笑顔になるような稽古、交流をこれからも行い、皆さんの心と心をつないでいきたいと思います。
「柔道家が増えることで、社会はより良くなる」
文武一道塾 咲柔館
※「note」より転載
https://note.com/shojukan/n/n2e838d758cdb
2022-09-03 22:27:00
コラム「柔道を1ヶ月やってみて変わったこと」(中高生・大人クラス)
咲柔館コラム182
柔道を1ヶ月やってみて変わったこと
子ども達の夏休みが終わり、いよいよ新学期が始まりました。保護者の皆様は、ほっと一息つかれているのではないでしょうか。道場の小学生、中学生、高校生のみなさんは、元気に始業式に行けたかな。新学期も勉強、運動、学校行事に一所懸命取り組んでくださいね。
この夏休み期間に、柔道を始めた高校生がいます。以前、柔道の試合をテレビで観たことをきっかけに興味を持ち、この夏休みに思いきって体験を申し込んだそうです。体験後はすぐに入塾を決めてくださり、柔道を始めてから、もう1ヶ月が経ちました。ほぼ毎回稽古に参加しており、礼法、受身、立技・寝技の基本動作が少しずつ身についています。
今回のコラムは、この1ヶ月についてインタビューした内容をお伝えします。
Q・柔道を1ヶ月間やってみて何か変化はありましたか?
はい。自分が変わったと思うことは2つあります。まず、「礼」が丁寧になったと思います。新学期に入って高校の先生に挨拶をした時も、自然と手を前に出す「柔道の礼」をしていました。あとは、自信がついてきたと思います。柔道で体を鍛えだしたお陰で、色々な意味で「強くなった」のを感じています。自信がついたせいか、前より友だちと積極的にコミュニケーションをとれるようになりました。
Q・柔道を1ヶ月やってみた感想はどうですか。
柔道は面白いなあと思っています。できないこと、むずかしいことも多いのですが、練習を通して一つずつ技や新しい動きが身についていくのが特に面白いです。
まだ柔道を始めて1ヶ月ですが、自分自身の変化を感じると共に、楽しみながら稽古に取り組んでくれていることをとても嬉しく思います。咲柔館では、学校に柔道部がない中学生・高校生たちが、学業や部活動などに励みながら、一所懸命稽古を行っています。これからも中高生の皆さんが、柔道を通して学んだことや身につけたことを、道場外でも生かしてくれることを期待しています。
「柔道家が増えることで、社会はより良くなる」
文武一道塾 咲柔館
※「note」より転載
https://note.com/shojukan/n/n8a02278ef542
2022-08-30 08:02:00
YouTube出演のお知らせ 9/16(金)21時~LIVE配信
https://www.youtube.com/watch?v=X7QA3udp3Zw
〈YouTube 詳細欄より〉
9月のみちねこラジオは、栃木県にある柔道教室「文武一道塾 咲柔館(しょうじゅうかん)」の綾川浩史(あやかわ ひろし)さんをお迎えして、スポーツと読書について語り合います。綾川さんは、元国語の先生。学校を退職してコロナ禍の2020年6月に柔道場をオープン。柔道を通して多くの熟生の居場所を作っています。どんなお話が聞けるかお楽しみに!
2022-08-25 10:27:00
9月の稽古予定
いつも咲柔館ホームページをご覧になって下さりありがとうございます!
9月カレンダーを掲載いたします。
より画像が鮮明な「PDFファイル」版はこちらです。
↓
カレンダー 2022年9月 .pdf (0.21MB)
咲柔館は、お子さんから大人の方まで、初心者の方やブランクがある方でも柔道を楽しめる道場です。
柔道にご興味がある方は、お気軽にお越しください。
見学・体験のお申し込みはこちらからお願いします。
↓
https://shojukan.com/contact
2022-08-24 12:06:00
コラム「江戸時代にタイムスリップ?!蔵で寺子屋体験」(出前教室)
咲柔館コラム181
江戸時代にタイムスリップ?!蔵で寺子屋体験
咲柔館のある栃木市は「蔵の街」とも呼ばれ、江戸時代から残る歴史的な建造物が沢山あります。蔵や古い建物をリノベーションしたおしゃれなカフェなども多くあり、そこでゆっくりとした時間を過ごすのもおすすめです。中には蔵を活動拠点とし、子育てに関する活動をされているNPO法人もあります。それが「栃木おやこ劇場」です。栃木おやこ劇場様よりご依頼を受け、8月19日(金)に小・中学生と保護者様を対象とした「寺子屋体験」を実施しました。
第1部は「親子素読体験」。江戸時代は寺子屋などで盛んに行われた素読ですが、現代ではほとんど行われていないようです。今回参加されたお子さんたちも、初めて素読を体験しました。素読の教材として用いたのは、「日本人千年の教科書」と言われている『実語教』。「やまたかきがゆえに、たっとからず。きあるをもって、たっとしとす。」(山高きが故に貴からず。樹有るを以て貴しとす。)私の後に続いて、みんなで声を出します。最初は、聞いたことがないような言葉にとまどっていたようです。でも、何回か繰り返すうちに、少しずつ言葉のリズムをつかみだし、最後は大きな声で素読をすることができました。やっぱり、子どもの学ぶ力ってすごいです。
後半は、保護者様にリード役をやっていただき、親子で素読タイム。お母さん、おばあちゃんが、『実語教』の言葉を声に出す。子どもはそれをよく聴いて声に出す。お互いの目を見ながら、交互に言葉を声に出しあう姿を見て、心が通じ合っているように感じました。5分程度の短時間でも良いので、ぜひお家で素読を続けてほしいと思います。
歴史を感じる建物の中で古典の素読をする。まるで江戸時代にタイムスリップしたような楽しいひとときでした。
※過去のコラム「『素読』で遊ぼう」
↓↓↓
https://note.com/shojukan/n/n42d8bf048d95
素読を終えたお子さんたちは、高校生スタッフのサポートを受けながら、夏休みの宿題&工作タイム。保護者の皆さんは、別の蔵に移動し、第2部へ。
主催者様から「教員経験や柔道指導の経験を生かし、保護者様向けのお話をしてほしい」とご依頼がありましたので、約60分間お話をしました。テーマは「『自立』『自律』した中学生・高校生になるために」です。皆さんはとても熱心で、中にはメモをとられている方もいらっしゃいました。最後に10分間とっていた質問タイムも、熱を帯びるうちに気づけば30分間が過ぎていました。1つひとつの事例がとても参考になり、私自身も勉強になりましたので、ぜひ今後の教育に生かしたいと思います。
いつの時代も教育は社会を作る根幹です。この歴史ある蔵の街で、これからも柔道や素読を使った教育をコツコツと続けていきたいと思います。
「柔道家が増えることで、社会はより良くなる」
文武一道塾 咲柔館
※「note」より転載
https://note.com/shojukan/n/n2d67a43cbf57