おしらせ
2021-10-05 19:00:00
咲柔館コラム108 学ぶことをやめたら、教えることをやめなければならない~全柔連公認指導者講習を終えて~
全日本柔道連盟公認指導者資格の更新講習を先日終えました。今年は新型コロナウイルスの影響で、オンラインでの実施です。録画してある教材(動画)を見ながら学ぶ「オンデマンド講習」は初めてだったので、少し不安もありました。しかし、実際にやってみると、何度でも動画を見返すことができ、自分のペースで(もちろん期限はありますが)じっくり学べるので、利点も多いと感じています。
講師の先生方の説明が分かりやすく、内容も充実していました。講習内容は以下の通りです。
①柔道論・②安全管理・指導・③指導者の倫理・④柔道の科学・⑤マネジメント・⑥基本指導(礼法・受身・立技・固技)・⑦体力トレーニング・⑧救急処置
今回の講習は、自分の指導方法や道場運営方法を見なす良いきっかけになりました。ここで得た知識の中で、すぐに現場で活かしているものもあります。例えば、「前回り受身」の指導方法です。今まで行ってきた方法と、ほとんど違いはありません。ただ、動作の表現がとても分かりやすいので、早速取り入れることにしました。
【右前回り受身】
①左膝をつく
②左手を右足の延長線上横につく
③右手をつく
→《ポイント》親指を内側に回すようにして、指先を自分の方に向ける
④お尻を上げ、顎を左肩につける
⑤回転して受身(横受身)をとる
→《ポイント》右手にしっかりと体重をかけ、動かさないようにする
この方法の通りにやると、柔道を始めたばかりのお子さんでも、きれいに、安全な受身をとることができます。特に参考にしたのは④と⑤です。今までは、④で顎を左肩につけたら「前に回る」と言っていました。確かに「お尻を上げる」「右手に体重をかける」という表現の方が分かりやすいですね。指導者は、「こうやると(方法)、こうなる(結果)」という理屈を正しく理解し、「こうやる」を、具体的に、分かりやすく言語化する能力が必要だと再実感しました。
「学ぶことをやめたら、教えることをやめなければならない」 。サッカーの元フランス代表監督ロジェ・ルメール氏の言葉です。科学は日々進歩し、世の中の常識も変わり続けます。だからこそ、常に指導者は学び続けなくてはいけません。講習内容の中には、初めて知った知識や指導方法もいくつかありました。長年指導を続けていますが、まだまだ知らない事は沢山あり、もっと勉強しなくてはいけません。「力をつければつけるほど、より多くの方の役に立てる」。私はそう信じています。これからも、塾生様により良い稽古・学習を提供できるよう、日々学び続けていきます。
※「note」より転載
https://note.com/shojukan/n/n73cb0f4baedc
2021-10-04 18:22:00
咲柔館コラム107 咲柔館の課外授業②~ネパールで柔道を広め続ける理由~【子どもクラス】
10月2日(土)、ネパールで柔道普及に尽力されている古屋祐輔さんが、咲柔館に来て下さいました。古屋さんは、20代前半の頃ネパールに行き、孤児院で柔道をする子どもたちに心動かされ、それ以来約10年間ネパールで柔道普及に努めています。その活動は、テレビ番組「世界の村で発見!こんな所に日本人」(朝日放送テレビ)でも紹介されました。
コロナ禍の影響もあり、昨年の12月に帰国され、今月末にはネパールに戻られるそうです。残り滞在期間がわずかな中、咲柔館に来て下さり、本当に感謝しています。
古屋さんは、咲柔館の子どもたちにネパールの文化や柔道について詳しく教えて下さいました。
ネパールでは、柔道場の数こそ少ないものの、その教育的価値が高く評価され、柔道を教える孤児院やろう学校もあります。多くの道場で嘉納治五郎師範の写真が掲げられており、ネパールの柔道家は嘉納師範を「神様」と考えているそうです。毎年10月28日には、嘉納師範の生誕祭が盛大に行われ、大きな誕生日ケーキを作り、パレードを行うほど、人々に尊敬されています。
「標高3790mへ届け!畳と笑顔!」と題し、昨年11月にNPO法人JUDOs様が、エベレストの学校へ畳と柔道衣を寄贈したニュースをご覧になった方も多いのではないでしょうか。もちろん、古屋さんもヘリで畳と柔道衣が届いた瞬間に立ち会っています。その時の様子(JUDOs様作製動画)も子どもたちと一緒に見ました。エベレスト柔道クラブのカジ先生は、その中でこう語っています。
「エベレスト地域にとって柔道は大切なんです。なぜなら柔道の大切な哲学と、私たちシェルパ民族の哲学や文化は似ているのです。エベレストで柔道をやる子どもたちに8つの柔道の哲学を教えたい。礼儀・勇気・友情・誠意・道義心・謙遜・尊敬・自制心です。」
「エベレスト地域に柔道クラブができたのは2016年でした。柔道がエベレスト地域で初めての公式なスポーツでした。それまでエベレストにスポーツはありませんでした。今でも(大会があるような)スポーツは柔道以外にはないです。だからエベレストで生活をしている子どもたちは柔道がとっても魅力的なんです。そして、子どもたちだけではなくて、両親や村人も喜んでいます。村人皆が柔道について知っているんです。そして、エベレストの子どもたちが大きくなった時、『世界一高い柔道大会』を必ず作ります。オリンピックや世界選手権と同じような「新しい柔道大会」を開催します。その大会でエベレストの子どもたちが金メダルを取るのが夢です。」
※「エベレストにある道場に柔道畳と柔道衣が届きました!」(JUDOs ホームページより)
→https://judos.jp/201114-2/
※「世界一高いエベレストから“柔道”で笑顔が溢れますように」(JUDOs YouTubeより)
→https://www.youtube.com/watch?v=TDwTKCfCyr0&t=94s
咲柔館の子ども達は、ネパールの柔道にとても興味を持ったようで、質問をする場面も多くありました。自分が習っている柔道の価値を再確認すると共に、世界へと視野を広げる良いきっかけになったと思います。
あるお子さんは、帰りがけに、「また日本に来てね。」と古屋さんに言い、古屋さんは笑顔で「君もいつかネパールに来てね。」と返してくれました。日本とネパールの距離は約5000㎞ですが、柔道場で共に過ごした時間によって、その距離は一気に縮まったようです。
古屋さんは、私の「なぜネパールで柔道を広め続けるのですか。」という質問に対してこう答えました。
「私は何かをする時、これが『誰かの役にたっているか』と常に考えます。」
自分の「損得」ではなく、「誰かの役にたつかどうか」を基準に行動されている古屋さんだからこそ、こうした活動が実を結んでいくのだと思います。古屋さんは、「自分は裏方での役割でして、ネパールの人たちが頑張っていることが多くの人に伝わってほしいです。」とおっしゃっていました。
実は古屋さんは、柔道をやったことがありません。ネパールの道場にいる時も、普段着でニコニコしています。ただ、古屋さんの心と行動は、「精力善用」「自他共栄」そのものです。ネパールにこんなかっこいい日本人がいることを誇りに思います。古屋さん、咲柔館に来て下さり本当にありがとうございました。これからも交流を続け、柔道のすばらしさを一緒に広めていきましょう。
これからも文武一道塾 咲柔館では、お子さんたちの心に響く課外授業を行っていきます。
※「note」より転載
https://note.com/shojukan/n/n3fbdb2529e8f
2021-10-03 19:12:00
咲柔館コラム106 「柔道遊び」で楽しみながら成長しよう【子どもクラス】
子どもクラスでは、稽古メニューの中に「柔道遊び」を取り入れています。「柔道遊び」とは、柔道の動きを使ったゲームやトレーニングのことです。遊び感覚で柔道の基本動作を身につけたり、柔道に必要な筋力や柔軟性を養うことができます。
咲柔館では約50種類の柔道遊びを実施しています。
【例1 ケンケンボール】
小さなボールをケンケンで取るゲーム。柔道で必要な片脚立ちのバランス力、脚力を養います。ボールを取る時の姿勢は内股や大外刈に似ており、その姿勢の保持も目的の1つです。お子さんの体力に合わせ、1分程度の制限時間を設け、その中で何個取れるかを競います。
【例2 ドラゴンボール】
対戦する2人でゴムボールを守る側と取る側とに分かれ、寝姿勢で行うゲーム。守る側は、カメの姿勢でボールを守り、取る側はボールを奪います。守る側の指を引っぱったり、顔を押すのは禁止です。寝技で必要な筋力を養うことができ、取る側は、相手を仰向けに返す方法を工夫することで、考える習慣も身につきます。寝技の導入時におすすめです。
柔道遊びの1番の目的は、「柔道は楽しい」とお子さん達が思ってくれることです。一昔前では、「柔道場で遊ぶなんてもってのほか」という考え方が多かったと思います。しかし、現在では子ども達が笑顔で楽しめるメニューを実施している道場も増えてきました。私は、けじめ・礼法がしっかりしていれば、子どもにとって「柔道」と「遊び」の境界線は曖昧で良いと思っています。柔道が「好き・楽しい・面白い」という気持ちがあるからこそ、進んで稽古を行い、成長していけるのです。そして、この気持ちを忘れなければ、中学、高校、大学、社会人とどのステージにいっても主体的な姿勢で柔道に取り組むことができるでしょう。
「今楽しい」、そして、「将来にも生きる」、少し欲張りな考えかもしれませんが、そんな稽古メニューを追究、実践し続けたいと思います。お子さんたちの笑顔が、稽古の評価です。
※「note」より転載
https://note.com/shojukan/n/n9d6c9f2db115
2021-10-01 11:51:00
咲柔館コラム105 10月の稽古目標~組む稽古の再開・嘉納師範遺訓~
2021年も4分の3が終わり、10月に入りました。柔道の試合(4分)でいうと、「残り1つ(※)」です。試合だと疲れがでる時間帯ですが、この終盤戦で何をするかが勝負の分かれ道になります。今年を良い終わり方にするためにも、1日1日を大切に過ごしていきましょう。
※柔道の試合などで、残り時間1分のことを「残り1つ」「あと1つ」と言うことがあります。
10月の目標は3つです。
①潔く受身をとろう(受)
②引き手をしっかり引き上げよう(取)
約1ヶ月半、組む稽古を控え、受身、基本動作やトレーニングを中心に行ってきました。今月からは少しずつ組み合っていきます。それに伴い、投げられる際(受)、投げる際(取)の留意点をしっかりとおさらいすることが当面の稽古目標です。安全で楽しい柔道をするためにも、頭と心と体でしっかりと理解していきましょう。
柔道の楽しさは、相手と組み合うことにあります。まだ稽古内容に制限はありますが、このような時代だからこそ、柔道を通して人と人とのつながりを感じられる機会を作っていきたいと思います。
③嘉納師範遺訓を暗誦しよう
柔道精神の柱「精力善用」「自他共栄」は、柔道家であれば誰もが知っています。しかし、柔道修行の目的を説いた「嘉納師範遺訓」を言える人はそう多くないかもしれません。お恥ずかしながら、私が嘉納師範遺訓を知ったのは大学生になってからです。
10月は、この暗誦に挑戦します。もちろん、言葉を覚えるだけでなく、その意味についてもしっかりと勉強します。「柔道とは何か」「柔道修行の目的とは何か」について学び、柔道をする上での目標を塾生様それぞれが立てて下れば嬉しいです。
10月も安全に楽しく柔道をしていきましょう。「柔道に興味がある」「お子さんに柔道をやらせたい」「柔道をやってみたい」という方は、お気軽に道場までお越し下さい。新しい出会いを楽しみにしております。
※「note」より転載
https://note.com/shojukan/n/n27307081e641
2021-09-29 21:29:00
咲柔館コラム104 『おかえりモネ』から学んだこと~強いのではなく、しぶとい~
「強いんじゃねえんだよ。なんつうかなあ…しぶといんだな。」
NHK連続テレビ小説『おかえりモネ』の中で、牡蠣養殖の名人であるおじいちゃんが主人公の百音に言った言葉です。竜巻の影響で、手塩にかけたおじいちゃんの牡蠣は被害を受けます。しかし、おじいちゃんは「たいしたことねえ。」と言い、片づけや復旧に向けて、すぐ動きだすのです。
今、コロナ禍の影響で、心が折れそうになっている方もいるでしょう。私もくじけそうになる時があります。「自分は強くないなあ…」そう思うこともしょっちゅうです。でも、モネのおじいちゃんには敵わないにしても、それなりの「しぶとさ」は、柔道を通して身につけてきました。
「これは難しい」「もう無理だ」そんな状況を乗り越えた経験がいくつかあります。その1つが高校2年生の時の、全国大会予選(団体戦)です。
この大会の2ヶ月前、稽古中に左手の骨(舟状骨)を折ってしまいました。しかし、無知な私は骨折だと思わず、痛みに耐えながら、ずっと稽古を続けてしまったのです。1ヶ月が経ったものの、手の腫れは引かず、痛みも増し続けたので、さすがに病院に行きました。そして、お医者さんから「すぐに手術をし、骨をつけなくてはいけない」と告げられました。
「全国大会出場」という夢が、一瞬消えたように思えました。でも、私は諦めませんでした。お医者さんに「手術は全ての大会が終わってからにしてください。」とお願いし、テーピングとサポーターで手をがっちり固定したまま試合に臨むことに決めたのです。
※怪我の悪化は、私の無知が招いたものです。怪我をしたら我慢をせずに、すぐに医療機関に行って適切な治療をしましょう。無理に稽古をしたり、試合に出ることは、将来に悪影響を及ぼすことがありますので注意してください。私の決断が全て正しかったわけではありません。
高校3年のインターハイ予選後に手術をしました。
〇で囲んだ部分が手術痕です。
左手が自由に動かないので、当然戦い方も変わります。試合までの期間は限られていましたが、戦術を練り直し、仲間と共に今できる準備を全てやりきりました。その結果、決勝戦で一本勝ちができ、優勝をすることができたのです(この時一本をとった技については、いつかご紹介します)。この時の感動が、私の人生観を変えたといっても過言ではありません。相手との戦いよりも、「難しい」「無理」という状況との闘いに勝った経験が、一生の財産になっています。
今目の前にあるコロナ禍や様々な困難を、そのまま当時の状況と比べることはできません。でも、柔道を通じて養った「しぶとさ」は今も色々な場面で生きていると思います。長い人生、つまずくこともあります。転ぶこともあるでしょう。でも、しっかり受身をとり、また立ち上がって歩き出せば良いのです(…と自分に言い聞かせています)。
『おかえりモネ』のおじいちゃんの「しぶとさ」を見習い、文武一道塾 咲柔館をより良い道場へと育てていきます。お互いがんばりましょう!
※「note」より転載
https://note.com/shojukan/n/n836bd547f970